花組東京公演『落陽のパレルモ/ASIAN WINDS!』

去年は迷った末やめたのだけど、やっぱり今年から宝塚の観劇雑感も書いておこうかな〜と思う。


ファン歴はサッカーよりも宝塚の方が圧倒的に長くて、今年の秋で20年になる。現在のトップスターは初舞台を観ていたり、同世代だったりするので、もう熱狂するというより、成長を見守るという感じが強いかも。観劇回数は年10回前後で、単に観に行くだけ。入り待ちや出待ち*1は今はしないし(中学生の時はしてた)、ネットでの情報集めとかもめったにしない。
私は生徒さん*2の好き嫌いが結構激しかったりするのだけど、まあその辺はあまり触れない方向で。


前置きが長くなったけれど、今年初観劇となった公演は、20年間ずっとご贔屓の花組

●宝塚ミュージカル・ロマン*3『落陽のパレルモ

第二次大戦中。新進演出家のヴィットリオ(彩吹真央)は、恋人のジュディッタ(遠野あすか)を連れて、祖母(梨花ますみ)が暮らすシチリアパレルモのカヴァーレ公爵家の屋敷に帰省する。ヴィットリオはユダヤ人であるジュディッタと結婚するため、国を捨てる決意をしていたのだった。ヴィットリオはジュディッタに、曽祖父母であるヴィットリオとアンリエッタの愛の物語を語り始める。


1860年パレルモ。イタリア統一のため義勇兵として戦ったヴィットリオ(春野寿美礼←主人公)は、功績を称えられて政府軍の一員となっていた。シチリアの名門貴族・カヴァーレ公爵家の晩餐会に出席したヴィットリオは、公爵の長女アンリエッタ(ふづき美世←ヒロイン)と出会う。アンリエッタは幼なじみのロドリーゴ伯爵(真飛聖)に求婚されていたが、ふたりは互いに惹かれ合う。
ヴィットリオは貴族の父と平民の母の間に生まれた子だが、両親は身分の違いゆえ引き裂かれ、自分を育ててくれた母は狂死していた。誰もが平等に暮らせる世界を作りたいという彼の考えに強く共鳴するアンリエッタ。だが逢引の現場をアンリエッタの父・カヴァーレ公爵(夏美よう)に発見され、ヴィットリオはパレルモから離れた土地に転任させられてしまう。ヴィットリオの両親同様、身分違いの恋に苦しむふたり。根っからの貴族であるロドリーゴは、アンリエッタが何故平民の男を愛するのか理解できずにいた。
イタリアは統一を果たしたものの、ピエモンテなど北部が中心となった政府の圧力と偏見、そして貴族ばかりが厚遇される現状に、シチリアの下層階級の住民は不満をつのらせていた。そんな時、ピエモンテの王家に嫁ぐことになったアンリエッタの妹・マチルダ桜乃彩音)が誘拐される事件が起きる。実行犯はヴィットリオの親友で、シチリアの現状に我慢できなくなったニコラ(蘭寿とむ)たちだった。ニコラの居場所を突き止めるため、ヴィットリオに帰還命令が出される。悲劇が待っているとも知らず、パレルモに戻ってくるヴィットリオだが……。

  • 第一印象:ヴィスコンティの『山猫』にちょっと似てないか?
  • 良くも悪くも、実に宝塚らしいお芝居だと感じた。バリバリのコスチュームプレイだし、主人公の男女は出会ったその日に恋に落ちるし、「身分違いの恋」というテーマも王道って感じだ。
  • イタリアの独立を背景にしている辺り、少し前に雪組で演った『霧のミラノ』と同じじゃんと思ったけれど(タイトルも似てるし)、毛色は違った。個人的にはラストシーンに意外性があった『霧のミラノ』の方が好きだなぁ。
  • ヴィットリオとアンリエッタの物語をベースに、ところどころに曾孫のヴィットリオとジュディッタの物語が挿入される構成。許されない恋に苦しむ4人の四重唱や、葛藤を表すダンスシーンなどもあったけれど、もう少し短くてもいいのでは? イタリア統一の戦いもちょっと長すぎ。それらの分を別のところ(ヴィットリオに想いを寄せるルチアとか、もっと書き込めそうな人物がいろいろいるじゃん)に割いて欲しかった。
  • ヴィットリオとアンリエッタがベッドへ……の場面で、ベッドに赤いライトが当たっていたのには大笑いしそうになった。2人の熱情を表現しているんだろうけど、なんかこう……ストリップ劇場じゃないんだからさー。
  • おさちゃん(春野)、膝は大丈夫? 最初の方で声の出が悪かった気がするけど、気のせい? 私はおさちゃんの、相手役を見る時の表情がたまらなく好きだ。
  • 本作がサヨナラ公演のふーちゃん(ふづき)。私、ふーちゃんって容姿も芸風も大の苦手なのだけど(ファンの方ごめんなさい)、アンリエッタは白いドレスが映えて、なかなか綺麗だった! クラウディア・カルディナーレっぽい髪型も似合ってたし。首がスーッと長いんだな〜と今ごろ気がついた。教養があり、貴族にしてはリベラルな思考を持つという役柄もぴったり。
  • 花組生として初めての公演になるゆうちゃん(真飛)。星組時代から好きだったので、個人的には花組に来てくれて嬉しい。お芝居では表情が1種類しかなかったなぁ(苦笑)。まぁ、笑いようがない役なので仕方ないか。
  • そのゆうちゃんが演じるロドリーゴ。あともう一声!というか、もうちょっと人物像を書き込んで欲しいな〜というか、どっか物足りないというか……。根っからの貴族で、平民として生きてきたヴィットリオとは対照的な存在であるはずなのに、なんか「私はあなた(アンリエッタ)の気持ちが判らない」とか延々と言ってるだけの人にしか見えないぞ。これはゆうちゃん云々ではなく、脚本の問題だけど。
  • みわっち(愛音羽麗)以下若手男役陣が、ニコラの仲間役でほぼ一緒くたにされてるのは勿体ない。あと、まっつ(未涼亜希)の役って一体何だろう? 貴族の家に出入りしている平民ってことなのかな?
  • ケイさん(萬あきら)が出てくるとお芝居が締まる。
  • そのかちゃん(桐生園加)、痩せた?
  • 以下、このお芝居ですごーーーーく気になったこと。超ネタバレなので白文字で。おいおいヴィットリオ、実の父であるドンブイユ公爵の「ドンブイユ家に来て欲しい」という申し出を、あまりにもあっさりと受け入れすぎじゃないか? 貴族と平民との格差にあれだけ苦しんだ(しかも平民である親友が、貴族の手で殺されたりした)はずなのに、自分が貴族になってアンリエッタと結婚できれば、もうそんなことはどうでもいいと? おさちゃんがちょっとだけ逡巡するような演技をしていたので、てっきり断るのかと思ったら……びっくり。もっと葛藤しろよー! ここはすごく納得いかない。
  • 一番好きな場面は(以下反転)誘拐されたマチルダとニコラがほんの少し心を通わせる場面。ニコラが「妹は働きづめで、女らしい楽しみのひとつもない。首飾りのひとつくらい妹に買ってやりたいんだ」というようなことを言い、ニコラが撃たれた後、マチルダがルチアに「受け取ってください……お兄さんから」と言って、首飾りを外して渡すところとか。妹想いのニコラに泣けるし、ああすることで精一杯の気持ちを表現しようとするマチルダにもホロリ。ニコラ、直情的すぎるけどいい男だ。

●ロマンチック・レビュー*4『Asian Winds!』

  • ………………。
  • おさちゃんの、毛だらけのモンゴルもどきの衣装に笑った。
  • 『Asian Sunrise!』のプロローグだったエイサーは、なつかしいっちゃなつかしいけど、衣装までまるっきり同じにしなくても……もうちょっと工夫が欲しかった。岡田先生の作品って、必ず自分の過去の作品の主題歌を使ったりするけど、なんか手抜きな感じがするんだよなぁ。
  • Asianシリーズは、毎回長い布やらロープやら小道具をいっぱい持たされて大変そうだ。
  • 山水画をバックに三角の笠を被った人たちが踊る場面、ウーロン茶のCMかと思った。
  • 今どき服部良一メドレーって…………。みわっち、まっつ、そのかちゃんといった若手男役たちに「♪山寺の 和尚さんは」とか歌わせるなんて……(でも頑張ってキザってたなぁ)。
  • チャイナドレスで女装してた3名は、みわっちが一番似合ってた。
  • おさちゃんのトレンチコート姿がカッコいい。
  • 服部メドレーでのゆみこちゃん(彩吹)。シンガーぶりを大いに発揮してくれるけど、衣装が白地に太いストライプのスーツ→ドラゴンが描かれたド紫のチャイナ服→まっピンクのスーツって……しかもどれも安っぽくて、なんか可哀想な気がした。
  • ゆうちゃんが青いスーツ姿で「青い山脈」を朗々と歌い始めた時はのけぞりそうになった。あすかちゃん&娘役の「銀座カンカン娘」は可愛いな。
  • 中詰めの「東京ブギウギ」で、おさちゃんが「宝塚友の会」と2回言ってた(今日は友の会の優先公演だった)。
  • 明洞で若手男役たちが韓国アイドルみたいなノリで歌い踊る→老人出てくる→いきなり『チャングム〜』みたいな場面に変わる「コリアン幻想」の場面は意味不明。
  • サンパギータの場面は、ゆうちゃんに哀愁を感じられて好きかも(衣装は置いといて)。あそこはらんとむ=新郎、あすかちゃん=新婦、ゆうちゃん=新婦の昔の恋人……って設定でよろしいか?
  • 銀橋でのデュエットの場面。ふーちゃんが、ドタドタと「ふー走り」で登場した時は笑いそうになってしまった。
  • あやねちゃん(桜乃)がロケットに入っていて、やっぱりまだ若いんだな〜と実感。あやねちゃんって、満面の笑みが辛そうだったなぁ……あまりニコニコしないのが似合うというか。
  • 大階段に、おさちゃんを中心に男役が黒燕尾で勢揃いすると、ショーでの不満がやや帳消しになってしまう自分が悔しい……。ああ、花組の黒燕尾のダンス、大好きだ! でもやっぱり、そのかちゃんに自動的に目が行ってしまうなぁ。手の置き方や位置などが実に美しいし、「怒り顔」で踊る彼女のダンスが大好きなので。そのかちゃんの斜め前がゆうちゃんで、その付近を双眼鏡でロックオンしてしまったw
  • エトワールは華城季帆ちゃん。歌は上手いし安心して聴いていられるけど、近年、エトワールの敷居がとても低くなった気がするのは私だけ? 歌姫だったしーちゃん(峰丘奈知)やちずさん(美々杏里)みたいに、ハイソプラノをババーンと響かせるような歌声を聴きたいよ。
  • 階段降りは、みわっち&まっつ→らんとむ→あすかちゃん→ゆうちゃん→ゆみこちゃん→ふーちゃん→おさちゃん、の順だったと思う。やはり、ゆうちゃんとゆみこちゃんの順列はどうなるだろう?ってことが気になったんだけど、ゆみこちゃんが2番手扱いって感じだった。ただし衣装と羽根は、らんとむまで3人同じだった気がする。


自分は花組好きだということをしみじみ実感。来週また観に行く予定。

*1:宝塚のスターの楽屋入り・楽屋出を待つこと。日比谷のシャンテや帝国ホテル付近の人垣の正体はこれ。

*2:宝塚では劇団員のことも「生徒」という。昔学校と劇団が分かれていなかった頃の名残らしい。「ジェンヌさん」と言うファンもいるけれど、個人的にはあまり好きな呼び方ではないなー。キーワードの「宝塚歌劇団」に「ヅカジェンヌ」とか書かれてたけど、あれはないだろう。ヅカジェンヌなんて言う人いないよー

*3:要するにお芝居

*4:要するにショー