月組中日劇場公演『あかねさす紫の花/REVUE OF DREAMS』

月組版『あかねさす〜』は中日劇場のみの公演(今のところは)。あさこちゃんの大海人皇子&かなみちゃんの額田女王観たさに、母と一緒に名古屋へ行ってきた。11日の夜の部、12日の昼の部を観劇。

●万葉ロマン『あかねさす紫の花』

天智7年。中大兄皇子霧矢大夢)の天皇即位を祝って、蒲生野で盛大な狩りが催された。肩を並べて狩りに出て行く中大兄皇子大海人皇子瀬奈じゅん)兄弟を見送る額田女王彩乃かなみ)は、2人に出会ってから今までの出来事を回想する。


20年前。鏡作部の長・鏡王(越乃リュウ)の次女で15歳の額田女王は、宮中に上がることを夢見る少女だった。鏡王の下で働く天比古(彩那音)は額田に想いを寄せ、仏師となって彼女の姿を菩薩像に彫りたいと願っていた。
ある日額田は、姉の鏡女王(花瀬みずか)の恋人の中大兄皇子、その弟の大海人皇子と初めて顔を合わせる。中大兄は、鏡女王を妃として宮中に迎えようとしていた。自分を子供扱いする中大兄に反感を覚える額田だったが、歳の近い大海人とはすぐに意気投合する。
5年後。大海人の妃となって十市皇女を産んだ額田は、宮中でも重要な行事を任され、満ち足りた時を過ごしていた。美しく艶やかになった彼女に心を奪われた中大兄は、額田を強引に自分のものにしようとする。衝撃を受けた大海人は、兄を尊敬しながらも、額田を渡すことはできないと断る。だが、額田は大海人を愛しながらも、中大兄にも惹かれていることを否定できずにいた。
兄弟間のもめごとが世間に露呈しては困ると考えた中臣鎌足嘉月絵理)は、額田を中大兄の妃とする代わりに、中大兄の娘の大田皇女と鸕野皇女(椎名葵)を大海人に輿入れさせることを進言する。中大兄は了承し、大海人と額田はそれを受け入れるしかなかった。深く傷ついて実家に戻った鏡女王を迎えに来た鎌足は、鏡王に、鏡女王を自分のもとで世話したいと告げるのだった。
数年後の有馬の湯。中大兄は、先帝の息子で謀反の首領として担ぎ出されようとしている有間皇子美翔かずき)を討つことを額田に告げる。中大兄の非情さに恐れおののきながらも、彼に抱き締められる額田。その様子を物陰から見ていた天比古は、一度は大海人に嫁ぎながらも中大兄の妃となった額田に絶望し、彫りかけていた菩薩像を壊そうとする。


物思いから覚めた額田のもとに、狩りの途中の大海人が馬を走らせてやって来る。思いがけない再会を果たしたふたりは、互いの心が今でも通じ合っていることを確かめ合い、15歳に成長した十市(憧花ゆりの)の姿を見つめる。額田への想いを断ち切れない大海人は、長槍を持ち、中大兄即位の祝宴の場へと向かう……。

  • 私が観たことのある『あかね〜』は、95年の雪組大劇場公演(ビデオ・細かいことは覚えてない)と、02年の花組博多座公演(生)。特に博多座公演は、おさちゃん(春野寿美礼)=中大兄皇子、あさこちゃん(瀬奈じゅん)=大海人皇子、みどりちゃん(大鳥れい)=額田女王と、Myゴールデントリオが主役の3人を演じていたので、ものすごーく印象が強い。
  • 博多座公演は中大兄皇子バージョンだったけど、今回は大海人皇子バージョンとのことで、脚本や演出を多少変えてあるそう。観ていて気がついた変更点は以下の通り。
    • プロローグ、博多座では蒲生野の狩りでの群舞からだったけど、今回は緞帳が上がると、舞台にいるのは大海人ひとり。大海人のソロ→さらに幕が上がって蒲生野の群舞、という流れになっていた。
    • 額田の居館の場面。博多座で中大兄が着ていた山吹色の衣装を、今回は大海人が着ていた。主役が山吹色を着るってことか。というか、皇太子である兄よりも、位の低い弟の方がいい衣装を着てることがちょこちょこあって、いくら弟が主役とはいえ何だかなぁ……と思った。
    • 大和三山の例え話。博多座では全て中大兄の台詞だったけど、今回は大海人の台詞になり、最後の「畝傍は困っただろうな」の部分だけ中大兄が言っていた。
    • 蒲生野で額田と再会した後、大海人が主題歌を歌う場面。博多座では途中から中大兄が登場して、「♪私はあなたが欲しい」の歌をかぶせてたけど(掛け合いというか、2人で同時に全然違う曲を歌ってるのに、重唱っぽくなっててよかった)、今回は大海人のソロだった。これが一番大きな変更点だと感じたけど、95年の公演では大海人のソロだった気がするので、元に戻したって感じかな。
    • ラストシーン。これはうろ覚えだけど、中大兄の「馬鹿者ーーー!!!」という台詞、花組では高い玉座の上から叫んでた気がする。今回、中大兄は下に降りて叫んでいた。
    • ラストのラスト。「この兄弟の争いが、壬申の乱へと繋がっていくのでございます」というようなナレーションがなくなっていた。
    • 細かい変更点はもっとあるはずなので、博多座のビデオを観よう。でも、大幅に変わってる感じはしなかったなぁ。あんまり変えようがないだろうけど。
  • 久しぶりに観て思ったのは、大海人と額田が一緒だった時期が相当短いな〜ってこと。たったの一場面しかないよ……それも、途中で中大兄の邪魔が入るし。もう一場面くらいないと、大海人が「返して欲しい」と思うほど額田に執着する根拠が弱く感じてしまうような。大海人の台詞にだけ出てくる「宇治での再会」がどんなもんだったのか気になるぞ。
  • 12日昼の部、額田を追っかける舟坂のゆらちゃん(夏河ゆら)が「なんて顔をしてるんです!」とアドリブをかまして、笑いを取っていた。
  • 難波の港の場面で出てくる酔っ払いの2人、すごい酔っ払いぶりだ(笑)。
  • 博多座公演の時に付け加えられた「狂いましたーーーー!!!」「くどーーーい!!!」は健在。
  • 11日夜の部、玉座に突き立てた大海人の槍がバターンと倒れたので「刺す演出はやめたんだ」と思っていたら、12日昼の部ではちゃんと刺さっていた。あれは失敗だったのかw
  • あさこちゃんの大海人。劇中の台詞じゃないけど「大きくなったなぁ」と感慨深かった。台詞回しや感情表現などが博多座の時よりも確実に進歩していて、額田との再会の場面、十市を思わず抱きしめる表情、その後の主題歌ソロでは泣けたよ(博多座の時は、泣けるってほどではなかったので)。ほかの人と違って一回演ってる役だし、完成度が高い感じ。
  • 額田は、とにかくかなみちゃん(彩乃かなみ)がたおやかで美しかった。みどりちゃんの額田は才気煥発で芯があり、中大兄の元へ行ったのもある程度自分の意思でって感じがしたけれど、かなみちゃんの方は運命に抗えぬまま……って印象を受けた。どちらの額田も好き。
  • でも、少女時代の額田はかなみちゃんの方が可憐でよかったかな。大人になった時との違いがはっきりしてた感じ。あさこ大海人とのコンビが何ともかわゆい。
  • きりやん(霧矢大夢)は、中大兄の強さや非情さ、粘着感wを最大限に表現していて、やっぱり上手い。でも、おさちゃんやゆきちゃん(高嶺ふぶき)の中大兄の方がいいなと感じてしまったのは、たぶん、きりやん自身のキャラクターが明るくてあったかくて、冷酷さがないからかな〜と思う(ゆきちゃんやおさちゃんは冷たい役が似合うからなぁ)。あとはタッパの問題と、「男の色気」みたいなものが足りないせいかも。決してきりやんの演技がマズいからではない。
  • なので個人的には、あさこちゃん中大兄、きりやん大海人というバージョンを観てみたかった*1
  • 天比古のひろみちゃん(彩那音)。うーん、台詞がちょっと一本調子だし、やっぱり若いなぁ……その分、少年時代はなかなか可愛らしくてよかったけど。博多座のみわっち(愛音羽麗)天比古も若かったけど、台詞回しや歌はもちっと上手かったぞ。とにかく歌を頑張って欲しい。
  • 今回の配役で一番びっくりしたねねちゃん(夢咲ねね)。十市役がぴったりなのでは?ってくらいの若さなので、天比古の女房で大人っぽい小月をどう演じるんだろうと思っていた。でも危なげなかったし、最初のソロも上手くて、予想以上によかったかも。小月の崩れた色気みたいなものまではさすがに出せてなかったかな。
  • 個人的にすごく気に入ったのが、あーちゃん(花瀬みずか)の鏡女王。綺麗だし、「気苦労な性質」って感じがするし、ちゃんとお姉さんに見えるし。特に、「でも、それ(=無理矢理鎌足の妻にさせられること)はそんなに遠い日のことではないかもね」というような台詞の後、自嘲気味に笑いながら去っていく演技に「おっ!」と思った(博多座では、最初から最後までただただ泣いてたような)。
  • えりちゃん(嘉月絵理)の鎌足も、常に背後で目を光らせてる切れ者って感じで渋い。大海人が暴れてるw時の家来に対する目配せなんかも、実にさりげない感じ。演技派が演るとやっぱりいいねぇ。
  • 短い出ながらも印象的だったのが、有間皇子を演じた下級生の男役。「私はできることなら、歌詠みとして一生暮らしとうございます」云々の台詞にホロリときた。「有間皇子、もしかして自分の運命(=中大兄に謀反の罪を着せられて処刑される)を察してるのかな」と思わせたし、その後、「有間皇子を討つ」と宣言する中大兄の非情さが生きてくる感じだった。母と「あれ誰? なかなかいいねー」と言ってたんだけど、プログラムによると美翔かずきさんだそうな。名前を覚えたので、今後注目してみるぞ。

●グランド・レビュー『REVUE OF DREAMS』

  • こちらは12月に東京で観たばかり。実はあまり好きなショーではない(嫌いって訳でもない)ので、お芝居ほどの思い入れはなし。なんかこう、個人的にグッとくる場面がないというか、人が出たり入ったり出たり入ったり(以下繰り返し)でガチャガチャしてるなーと思ってしまって。
  • プロローグの赤い衣装のかなみちゃん、それほど目を利かせなくなった?
  • 12日昼の部、プロローグの最後であさこちゃんがきりやんに向かって濃厚なウインク→きりやんニヤリ、という場面があって笑えた。
  • あさこちゃんの客席下りの時、すぐそばの通路際に座ってたおじさんが、実に嬉しそうな表情で見上げてるのが印象的だったw
  • AMERICAN DREAMの場面は、明るくて躍動感のあるきりやんにぴったりだな。11日夜の部、椎名葵ちゃんのドレスのフリンジがきりやんの衣装に絡まっちゃってたけど、組んで踊ってる間に外せてよかった〜。
  • FOREVER DREAMの場面、何だか意味がよく判らぬ。でも、越乃リュウ氏のシャドーの存在感がすごい! 東京公演で誰がシャドーを演ってたのか思い出せないほど。
  • あのせわしない宇宙の場面(どの辺が宇宙なのかよく判らん)、娘役の黒いドレスと音楽は好きかも。
  • 砂漠の場面、あさこちゃんの衣装が忍者みたい……(と東京でも思った)。確かここで、越乃氏があさこちゃんをリフトするんだけど、11日夜の部と12日昼の部とでリフトの形が変わってたのは気のせい?(11日夜=脇の下に腕を差し入れて持ち上げて回す 12日昼=頭上に持ち上げて回す だったような……)。
  • まあとにかく、越乃氏が全体的に目立ってた。お芝居の鏡王もいいお父さんって感じだったし、『Ernest〜』以来急速に気になる存在になりつつある。
  • ショーですんごく目立ってたのがマギー(星条海斗)。もともと目立つ容貌だけど、今回は5番手くらいの位置づけなのか、宇宙の場面のラストのトリオに入ったりしてて、さらに目を引いた。あと、真野すがた氏のアピール具合がすごい。
  • ラベンダー色のドレスのかなみちゃんが娘役を引き連れて歌う、ボサノヴァっぽい曲は好き。
  • ねねちゃん、背が高いけど可愛いなぁ。日本物より断然よい。なんか愛玩動物というか、ぬいぐるみみたいだ。ロケットの時はセンター(マギーの向かって左隣)にいたので、ロックオン状態で注視してしまったよ。
  • ダンサー好きの母が「娘役版オトコちゃん(音羽椋)って感じの、ダンスのすごく上手い子がいた」って言ってたけど、誰のことだろう。
  • あさこ・かなみコンビは、個人的にこれまで観てきたトップコンビ史上のベスト1ではないか?ってくらい好きなので、デュエットダンスの場面がすごーーーく楽しみになった。嬉しそうな顔で踊ってる姿にホクホク、あさこちゃんがかなみちゃんの頭を抱き、かなみちゃんが寄り添う仕草に萌え、って感じ。
  • フィナーレはエトワールが音姫すなおちゃん、それからひろみ→きりやん→かなみちゃん→あさこちゃんの順で階段下りをしてたような。


何にせよ、月組の下級生の顔と名前を早く覚えなくちゃなー。一時期月組から遠ざかってるうちに、よく判らなくなっちゃったので。

*1:博多座公演が発表になった時も、てっきりあさこちゃんが中大兄だと思ってたので