本棚からこんにちは・PART1

秋の始めに自宅のリフォームが終わって、箱詰めした荷物を元に戻さなくてはならなくなった(といっても、自室には家具が全然ないんだけど)。本の量がまだ相当多いので、もう一度整理してみようと思いつつ、ついつい読みふけってしまって全然作業がはかどらない。


昨日読んだ……というか、目を通したのがこの2冊。

ブルーベリー・ディクショナリー

ブルーベリー・ディクショナリー

「男のオリーブ少女」みたいなヒト(本業は一応ミュージシャンらしいけど……)が、お気に入りの場所だとかレコードだとか本だとか食べものだとか映画だとかを、季節ごとに分類・アイウエオ順のディクショナリー形式でリストアップした本。「ストロベリー〜」が先で、「ブルーベリー〜」はその続編。
「イ」だったらイノダ*1、「ソ」だったらソルト・ウォーター・タフィー*2、「ホ」だったらボンジュールレコード*3、「ユ」だったらユロ氏*4……てな具合。これで何となく、この本の雰囲気、ターゲット層が掴めるのではないかと思う。とりあえず、以下の項目のうち4つ以上当てはまる人は、買っても損しないはず。

  • 「オリーブ」の薫陶を受けた。
  • カワイイもの、綺麗なもの、気持ちいいものが好き。
  • CDやレコード、本、映画の情報にアンテナを張り巡らせ、それなりにお金もかけている。
  • 世間で大流行しているものは避ける傾向がある。『恋のマイアヒ』とか『電車男』とか絶対イヤ!
  • 渋谷系(←死語)、ネオアコギターポップ大好き。
  • お散歩とカフェをこよなく愛する。

ジャケ写などをコラージュっぽくちりばめた、2色刷り中心のデザインも可愛い。パッと開いて、目に付いた項目を適当に読んでいくのがイイ感じかも。


2冊とも、発売時に書店で飛びつくように買った本だった。ただ……ただだねぇ。初読の時からそこはかとなく気になってはいたものの、今回久々に目を通してみて、こう叫びたくなってしまった。「スカしたこと書いてんじゃねー!」と。
それぞれの項目に、2〜3行程度のキャプションがついているのだけど、例えば「代々木公園」だったら、

代々木公園 Yoyogi kohen
春になると黄色の菜の花畑。夏には緑いっぱいで涼しい。イギリス製のランチ・ボックスにサンドウィッチをつめて、さぁ、GO!


――「ストロベリー・ディクショナリー」より

全編こんな調子で、何ともいえぬむず痒さというか、居心地の悪さを感じてしまう。
そしてその居心地の悪さは何処から来るのか。たぶん、人生というものは、可愛いものや素敵なものにだけ目を向けて生きていくことはできないって事実を、歳を取って改めて実感してしまったせいだと思う。
気持ちのいい生活を送るためには、ときには仕事の締切に怯え、税金の高さと給料の安さに泣き、家族とぶつかり、愛するチームの不甲斐無い戦いぶりに怒り……って具合で、苦しい思いもしないとダメなはず。でも、「身の回りのハッピーなことを紹介する」この本は、そういう醜くドロドロした部分は当然の如く排除されていて、その辺の浮世離れ具合が、今の私には逆にツラく感じる。
買った時は「素敵な本だな〜」「あ、これ、私も好き!」って感じで、生活感のなさもひっくるめて、純粋に楽しんでいたはずなのになー。楽しむどころか、苛立ってしまう今の自分が悲しい。Amazonのカスタマーレビューを読むと、自分が汚れた大人になったような気すらするよ。そういう意味では、心に余裕がないとダメな本といえるかも。

*1:京都の超有名なコーヒーショップ、イノダコーヒのこと

*2:60年代、たった1枚のアルバムを残して消えたソフトロックバンド

*3:代官山&新宿伊勢丹BPQCにあるレコードショップ。おしゃれ系の音楽多し

*4:フランス映画『ぼくの伯父さん』シリーズの主人公