家族の肖像(16/100)
- 作者: 宮部みゆき
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2002/08/01
- メディア: 文庫
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嵐の夜、荒川区の高層マンションの2025号室で起きた「一家4人殺し」。4人のうち3人は室内で、残る1人はマンションの下で死体が発見されるという異常な状況だった。事件の前後に何があったのか? 殺された「一家」の実像とは?
記者らしき人物(作中では一切姿を現さない)による、関係者への丹念なインタビューを交えたルポルタージュ形式で物語が進んでいくのが面白い。分厚いけどサクサクといけた。
それにしても登場人物の多いこと! しかも、ひとりひとりの人物像の描写の濃く生々しいこと! ひとつの事件には、これだけ多くの関係者がいて、それぞれに背負ってきた人生があるんだな〜と感じさせられた。それと、ひとつの物事は、人によってこれだけ見方が違うんだな〜ってことも。
勝子の人物像があっさりしすぎで、それに比べるとトメの生涯が語られすぎじゃないか?って気もしたけれど、わずか数十年前の日本ではああいう家族形態もあったんだよ、ということを作者は言いたいのかな、と思った。
あと、祐司の気持ちは判らんでもないけど、どうしようもなく嫌な奴だな。それと、小糸静子みたいな人は嫌いだ。でも金銭感覚が欠けてる辺りは自分と似てるんだよなー。だから余計嫌いだし、読んでいてムカムカ。
舞台となる「ヴァンダール千住北ニューシティ」に立地的にも外観的にもぴったり来るマンションが実在するので、ひょっとしてあそこをモデルにしたのかな〜などと思いながら読んでいた。
うちも大世帯が住むマンションだけど、未だに全然知らない人がいるし、知られていなかったりもする。徹夜仕事3日明けの朝、ヨレヨレ状態で帰ってきてエレベーターに乗ったら、どっかのおばさんにいきなり「あなた、香港の方?」とか聞かれて、「20年以上住んでますけど(やや怒)」「あらそうだったの。お会いしたことないから」などというやり取りをしたことがあった。私もその、軽く失礼なおばさんのことは全く知らなかった。だから、この本みたいな事件が起きても不思議はないな〜と実感できて、ちょっとだけ背筋が寒くなった。ゾクリ。