『ラブレーの子供たち』(48/100)

ラブレーの子供たち

ラブレーの子供たち

芸術家の伝記・レシピ集・作品に登場する料理を再現して食し、彼らの生涯や人となり、世界観に触れるという、ユニークな試みのエッセイ集。
童話や小説に出てくる美味しそうな料理のレシピ集(『赤毛のアン』のお料理ノートとか『村上レシピ』とか)、もしくは歴史上の有名人の健啖家ぶりを取り上げたエッセイは結構あるけれど、両方が合わさってるような本ってなかなかない気がする。しかも本書に登場するのは、

などなど、各人の生き様や美学が強烈に匂い立ってくる、一味も二味も違う料理ばかり。必ずしも美味しそうなものばかりではないのもミソ。『ブリキ〜』の鰻料理なんて、生クリームにヌルリと黒光りした鰻が1匹横たわっていて、かなり不味そうだ(実際不味いらしい)。
アピキウスの古代ローマ料理(ゆで卵を15個詰めた豚の丸焼きほか)や、40年代イタリアのアバンギャルド芸術家が提唱した「未来料理」*1といった非現実的な料理を苦労して再現したり、本物のキャンベルスープ缶を100個重ねてアンディ・ウォーホルの作品を模してみたりと、その凝りようには驚かされる。
そして写真がとても綺麗で、料理がオブジェみたいに見えるページもあるな〜と思ったら、『芸術新潮』の連載をまとめたものなんだそうな。道理で。巻末のスタッフリストを見ると、一流どころの料理人が調理を担当していたりして、贅沢な作りだな、という感じ。食好きも芸術好きもどちらも満たされそうな一冊。

*1:手を青く染め、壁に指定の絵画を掛け、1品ごとに室温を調節しながら食べるコース料理とか