中島梓『とんでもぐるめ あずさ流極楽クッキング』

とんでもぐるめ―あずさ流極楽クッキング (グルメ文庫)
ハルキ文庫が、食についての本を集めた「グルメ文庫」というのを始めたらしい。この手の本って、昔は中公文庫辺りに沢山あった気がするんだけど、最近はそうでもなかったもんなぁ。食関係の本が大好きな私は嬉しい。手始めに、絶版になって探していたある本と、『とんでもぐるめ』の2冊を購入。

中島さんの本といえば、15〜6年前に出版された『くたばれグルメ』がすごく好きだった。当時は「グルメブーム」「食べ歩きブーム」華やかなりし頃で、「値段や内装はいっちょまえな癖に激マズ」なレストランがボコボコと出現していたらしい。「すべての料理が薄甘いうえ、旨味が凝縮されたパエリアのおこげを取り分けてくれないスペイン料理店」や、「1時間待たせて生煮えのとりそばをよこす中華料理店」など。そういった店や、猫も杓子もグルメグルメと唱える風潮を、軽妙な筆致でバッサバッサと斬り捨てていたのが痛快だった。
で、個人的に惹かれたのは、中島さんが愛する食べ物や料理について、あまりにも美味しそうに書かれていたこと。春雨フェチ仲間のために開催した、春雨料理づくしの「春雨の宴」、高校の頃入り浸っていた小さな喫茶店で出していた、ホットドッグとハインツのスープ。同じく春雨フェチで、お鍋は春雨を中心に食べる私は、激しく頷きまくりながら読んだ覚えがある。あと、「長もの(=麺類やら春雨やらしらたきやら)好き」とか、玉村豊男さんの本が好き、って辺りも、高校生の分際で「私も私も〜!」と共感しまくっていた。
マンズワイン事件をチラッと皮肉った表現(確か「M……のワイン」と書かれていた)とか、現在では「???」な部分もあるだろうけど、絶版になって久しいこの名著、是非ともグルメ文庫で復刊させて欲しい。

そして、この『とんでもぐるめ』。中島さんの個人サイトの連載を1冊にまとめたものだそうで、ご本人の意向もあって、ネット文体を修正せず載せているのが特徴。(笑)とか(爆)とか。そして、『くたばれグルメ』を読んだ時の、「中島さんってお料理好きなんだな〜」という感想に、力いっぱい答えてくれている感じ。ご本人も「私はお料理上手、作ったものを出すと、家族もお客も皆大喜び」と堂々と書かれているしね(この辺も潔い)。
季節に合わせた食べ物についてのコラム+レシピという構成で、調味料の量なんかは目分量っぽいんだけど、作り方がなにげに凝っているのだ。ゴーヤチャンプルーに入れる肉に下味をつけるとか、市販のルーを使ったビーフシチューに、ハインツのデミグラスソース+ブランデー少量を足すとか……。読むと判ると思う、「とんでも」と謳いつつ、かなり本格的であることを。台所に立ち慣れていない私が作ると、1品1〜2時間くらいかかってしまいそうな気がするよ(汗)
本格的なおひたしや「おばあちゃんの3日漬け卵」、たけのこのお刺身とつけ焼き、ビーフシチュー、ねばとろ丼など、読んでいるだけで作ってみたくなるレシピの数々。
で、早速本に出ていたレシピの一部を早速実行してみましたよ、「麻婆春雨」。それも、「N園のインスタントをより美味しく」という超お手軽なものを。鍋にごま油を熱して、みじん切りのねぎ&にんにくを炒めて香りを出し、そこに水と春雨を入れ、あとは袋に書かれている通りに作る。この時、豆板醤を適量加える。以上。にんにくは私が勝手に追加したものだし、本当は豆板醤じゃなくてオイスターソースだったんだけど、たったこれだけで確かに味がグレードアップ。真夜中なのに、ごはんが随分進んでしまった(爆)。
いずれにせよ、ハレの料理からケの料理まで多彩にカバーされているので、いずれ台所に毎日立つようになった暁には、大いに活用したいな〜と思う。