『中大兄皇子伝〈上〉』(19/100)

はてな年間100冊読書クラブ用のエントリを書いてきて、自分はキャッチや小見出しなどを考えるのが致命的に下手っぴだと再実感(涙)。もう、読了本のタイトルをそのままエントリタイトルにすることにした。

今月、名古屋に宝塚月組公演『あかねさす紫の花』を観に行くので手に取った本。『あかねさす〜』は、中大兄皇子大海人皇子額田王の三角関係を描いたお芝居で、何度も何度も再演されている名作。

中大兄皇子伝〈上〉 (講談社文庫)

中大兄皇子伝〈上〉 (講談社文庫)

前大王・舒明と現大王・皇極の間に生まれた葛城皇子(=中大兄皇子)は16歳。政治の実権を握る蘇我蝦夷・入鹿親子の専横ぶりに危機感を抱く彼は、中臣鎌子鎌足)と組んで、蘇我家を倒す計画を練り始める。


黒岩重吾の古代史ものはとても読みやすいけど、いつも人物像が一般的なイメージそのまんまというか、悪く言えばステレオタイプだなって印象を受ける。本書の中大兄皇子像も、勇敢で進歩的な考えを抱くエネルギッシュな皇子って感じで、あまり意外性はないかも。
でも、それほど資料も残ってない中大兄皇子が、野望や嫉妬心を持つ血の通った人間として動き回るさまを追うのは実にワクワクする。一人称で書かれてるのは珍しいし、鎌子と手のひらの汗をすすり合って(!)忠誠を誓い合うさまや、クライマックスで入鹿を斬る時の描写は生々しい迫力。黒岩氏の小説に必ず何箇所か登場する「媾合」関係の記述はもっと少なくてもいいと思うけどw

上巻で書かれているのは乙巳の変を成功させ、大化の改新に取り組もうとする辺りまで。
中大兄の目から見て「茫洋として、何を考えているか判らないところがある」人物とされている弟・大海人皇子との対立が、下巻でどんな風に描かれるのかが楽しみ。