『野ばら』(28/100)

読了日は3/3。

野ばら

野ばら

宝塚歌劇団の新進娘役・千花とフリーライターの萌は、名門女子校で出会った親友同士。千花は若手歌舞伎役者・路之介とデートを重ねるうちに梨園入りを夢見るようになり、妻のいる映画評論家・三ツ岡に興味を持った萌は、彼の前妻の娘に近づいて仲良くなろうとする。


林真理子って、女性の心の闇というか、ドロドロした嫌〜な部分の描写が実に上手いなぁ……といつも思う。でも、登場人物たちの虚栄心やら嫉妬やら優越感やらに当てられて、読んでいるとかなり疲れる。裕福に育って苦労を知らない24歳のお嬢さんたちを描いた本書もそうだった。
それぞれの思い通りにいかない恋に、家の問題や仕事の悩みが絡んでくるのだけど、あんまり切迫感がないんだよなぁ。全体の流れも、華やかな場所にお出かけ→路之介との将来を夢見る千花→三ツ岡に近づこうと画策する萌→2人の会話→以下繰り返しって感じで、途中で飽きてきてしまった。千花にも萌にもまるで感情移入できないせいか、「ふーん、あっそ」としか思えず……読み終えるまでキツかった。
京都の隠れ家的な高級ステーキ店だの、海外ブランドのパーティのVIPルームだの、富豪宅の観桜会だのと、一般ピーポーには縁が無いような華やかな場所がふんだんに登場し、しかもいちいち描写が細かいので、そういうのに憧れているような人にはおすすめかも。個人的には「もうお金持ちのおじさんとのお食事ネタはいいから」とか思ってしまったけど。


何故この本を手に取ったのかというと、文春での連載時に何回か読んで、宝塚の内部事情や生徒の実態が沢山書かれていることにびっくりしたから。露骨な描写もあったりして、「こんなことまで書いて、宝塚からクレーム来ちゃったりしないの?」と思ってしまったほど。林氏はタカラジェンヌと交流があるとエッセイで公言されていたので、かなり真に迫ってるんだろうな〜と思う。
で、気がついたら連載が終わってたので、結末はどうなったの?と気になっていたのだけど、何だか尻切れトンボな印象を受けた。……ハッ、ひょっとしてクレーm(ry


そういえば、「新井家」の出であることがアイデンティティな萌に対して、千花は最後まで本名の苗字が明らかにされていなかった(宝塚での芸名は出てくるけど)。これはやっぱりわざとなのかな?