『旅、ときどき厨房』(45/100)

フォトジャーナリストで、食文化研究家でもある森枝卓士氏の本が好きで、何冊か持っている。久しぶりに著書を手に取ったのだけど、スタジアムでの並びの時間中にほとんど読めてしまった。

旅、ときどき厨房

旅、ときどき厨房

アジア、ヨーロッパ、日本と、森枝氏がこれまで旅先で味わってきた印象深い料理の数々を、自宅の厨房で再現してみましょう、という食&料理エッセイ。
パッタイ(タイの炒め米麺)のように、「日本のタイレストランで出てくるものは何か違う!」と本場の味に近づけようとしている料理もあれば、「手巻き寿司風生春巻き」みたいに、森枝流にアレンジを加えている料理もあり。
東南アジアの食文化の本を多く書かれている氏らしく、タイ料理やベトナム料理が若干多めな印象。それと「カレー博士」と呼ばれ、カレー漫画の監修をされていることもあってか、カレーも4品ほど載っている。柚子胡椒やピック・ナムプラ(唐辛子を漬け込んだナンプラー)といった調味料の作り方も紹介されていて、両方とも好きな私は、あっ、自分でも作れるんだ、と目から鱗だった。
材料さえ揃えば簡単に作れて、かつ食欲をそそられる一品ばかりなのだけど、特にゴクリとなったのは、大阪の日本料理店で出てきたという「海胆のジュレ、温泉卵添え」と、脂の少ない牛肉を細切りにし、梨とともに食べる韓国のユッケ。水俣産のサラダタマネギもそそられるし、『美味巡礼の旅』に続いて、本書にも登場する能登の民宿「さんなみ」の「コンカイワシのパスタ」(アンチョビのパスタに近い感じらしい)もイイ。写真もとても美味しそうで、読んでいてお腹がすいてくる一冊。