『小泉武夫の料理道楽 食い道楽』(54/100)

小泉武夫の料理道楽食い道楽

小泉武夫の料理道楽食い道楽

日経新聞連載をまとめた、小泉先生の食エッセイ第4弾。相変わらず「味覚人飛行物体」と称して、日本各地での激務のかたわら名物に舌鼓を打ち、「食魔亭」(=自宅キッチン)で料理の腕をふるうエピソードが軽妙に綴られている。
食関係の本は沢山読んできたけれど、最高級の食材や一流料理店のことばかり書いてあると、どうしても「ケッ」と思ってしまう(貧乏人の悲しさよ)。その点小泉先生は、取れたてのワタリガニもラーメンスープぶっかけ飯も等しく美味しそうに食べておられるので、とても好感が持てる。
本書に登場する食べ物で、特に気になったor思わずゴクリとしたのは、

  • 蜂の子めし(食べたくはない)
  • くらげ料理
  • ギョウジャニンニク料理3種(おひたし、卵とじ、醤油漬け)
  • ネマガリタケやウド、昆布の味噌漬けの古漬け
  • タコ料理(サッと湯引きした刺身、桜煮、桜煮で作るタコ飯、焼きダコ)
  • 大正エビの塩焼き
  • 香港のワンタン麺
  • 鍋焼きうどん
  • 自己流湯豆腐(つけ醤油に金山寺納豆や「うおつゆ」という魚醤を使う)
  • オリジナルふりかけ(乾燥納豆をすりつぶしてかつおぶし、ごま塩を混ぜる、乾燥させた八丁味噌かつおぶし、もみのりを加える)


そして、新聞連載に関して「何故こんなに美味しそうに書けるのでしょうか」という質問が多いらしく、「まえがき」でその極意を伝授しておられた。曰く、どのように美味しいのかを目耳鼻口すべてで観察して、感じたままに文章化されておられるとのこと。
確かに、アジフライひとつとっても、パン粉のサクリという音、フライの香ばしさ、アジそのものの香りとうまみ、油のコク、湯気、そういったものがあますところなく表現されていて、なんともいえない臨場感がある。それができるのも、小泉先生が鍛え抜かれた味覚や嗅覚、文章力を持っておられるからで、つい「美味しい」ですませがちな私としては、見習わないとなー、と思う。