『くそったれ、美しきパリの12か月』(62/100)

読了日は6/22。

くそったれ、美しきパリの12か月

くそったれ、美しきパリの12か月

「くそったれ」と「美しきパリ」のギャップに惹かれたのだけど、ひとことで言うなら「パリのイギリス人」な話。
イギリス人はフランス人のことを「frog eater(蛙を食う人)」とか呼んでバカにするというし、誇り高いフランス人は、外国人に対して(本当は英語を話せても)あえて英語では喋らずフランス語で通す、という話を聞いたことがある。その辺の国民性の違いとか軽い摩擦なんかをユーモアたっぷり&毒少々に描いた小説。
実はあとがきを読むまで、小説だとは気がつかなかった……てっきりノンフィクションかと思ってた。作者が「スティーヴン・クラーク」で主人公が「ポール・ウエスト」なんだから気づけよ!って感じだけど。作者の10年間のフランス生活を元ネタにしてるんだそう。


フランスの食肉加工会社にヘッドハンティングされ、パリにやってきたイギリス人ポール・ウエスト。英国風ティールーム開店プロジェクトの責任者になるも、会社ではそこら中で頬ずりやキスをしてるわ、プロジェクトのメンバーは仕事へのやる気が皆無だわで、イライラが募る毎日。おまけに電気屋やカフェの店員は感じ悪いし、道路は犬の糞だらけ。俺はこの街で、この会社でやっていけるのか……!?
と、こんな調子で、フランスとフランス人への呪詛を書き連ねて1冊が終わるのかと思ってたらそんなことはなく、ポールは上手い具合に困難を乗り越え、徐々にフランスでの生活になじんでいくのだ。大学生アレクサや上司の娘エロディー、ディスコで知り合ったマリーだのと、フランス人のガールフレンドもあっさりできちゃうし(というかこの人、手が早いよ)。おそらくポールは、パリに住む外国人の中では順調に生活できてる方なんじゃないかと思う。機転も利くし運にも恵まれてるし。
そして、最初は不気味がってたフランスの食生活にもすっかり慣れて、逆にロンドンに帰省した時に「なんでパンをスーパーで買うんだよ」「サラダってもんはそうじゃないだろ!」状態になっちゃったりするのが面白い。生牡蠣とか匂いの強いチーズとか、フランスの食べ物に対する表現は気持ち悪くなる部分もあったけど。
まぁでも、イギリス人とフランス人の間でどうしても相容れない部分はやっぱりあるんだな、という感じだった。
異文化との出会いに困惑する本筋以外に、上司のジャン-マリーの不正の証拠を握ってしまい、ポールどうする!?ってサイドストーリーもあって、楽しく読めた。


続編がありそうな終わり方だな〜と思ったら、実際にあるらしい。これは読みたいぞ。