『チョコレートコスモス』(75/100)

はてな年間100冊読書クラブ活動をサボっていたら、いつの間にかメンバー一覧が美しく整理されていた(部長のid:cha-cha-kiさん、復活されたのですね。お疲れさまです)。100冊読書のエントリは1ヵ月ほど書いてなかったので、過去ログを見て「まだ活動してるな」と判断していただいたようで……スミマセン。一応現時点でここまで読んでるので、期限日の12/7までの間に帳尻を合わせられればと思っとります。


で、8/13に読了したこの本。図書館で何ヵ月も予約してたのがまとめて来ちゃった本・その2だったりする。恩田陸の本で読んだことがあるのは、『木曜組曲』『六番目の小夜子』の2冊だけ。どっちもすごく面白かったのだけど、次にどれを読もうか見当がつかず、後が続かなかったのだった。

チョコレートコスモス

チョコレートコスモス


芸能一家に育ち、美貌と才能に恵まれた若手人気女優・東響子。演劇を始めたばかりなのに、天才的な演技力で周囲を驚かせる女子大生・佐々木飛鳥。2人の女優を中心に、脚本家の神谷や、飛鳥の劇団仲間の巽らが織り成す演劇ドラマ。
幼い頃から何も考えずに女優業を続けてきたことに迷いを抱く響子は、伝説のプロデューサー・芹澤が手がける「女性2人が主人公」の舞台のオーディションを受けさせてもらえず、ショックを受ける。一方、小劇団で初舞台を終えた飛鳥は、オーディションの誘いの通知をもらって嫌々ながら受けに行くが……。


2人の対照的な女優が登場する演劇ドラマというと、どうしたって『ガラスの仮面』を思い浮かべてしまうけど、実際、『ガラス〜』へのオマージュとして書かれた作品なのだとか。そして『ガラス〜』同様に読み始めたらやめられなくなり、分厚いのにサクサクと読み終えてしまった。
『ガラス〜』もそうだけど、何と言っても面白いのは、稽古場やオーディション、舞台の内容や演技が、演じる者・観る者の心理描写を交えながら細かく書かれていること。「ゼロ」の旗揚げ公演『目的地』にしろ、オーディションの『欲望という名の電車』にしろ臨場感たっぷりで、読んでいて自分も観客になったかのような高揚感を覚えるのだ。
特に圧巻だったのは、『欲望〜』での演技バトル。ヒロインのブランチに対して、4人の候補者たちがそれぞれに工夫をこらして「ブランチの影」を演じるという設定で、彼女たちがどういう演技を見せるのかワクワクし、ブランチとの絡みにゾクゾクしっぱなしだった。ハー、興奮。


見た相手の表情や動きを的確に捉えて真似できる能力を持つ飛鳥は、何だか人間離れしたキャラクター。なので個人的には、後半で書かれる響子の嫉妬や葛藤、苦悩などに惹かれた。『ガラス〜』で、主人公の北島マヤよりも、「天才」と言われながら実は努力家キャラだった姫川亜弓のエピソードにより惹かれたように(←これは私だけ?)。
で、途中、「この性質が後に飛鳥を苦しめることになる」みたいな一文が出てきたりしたけど、続編ありってことだろうか。あるよね? 内容的にはプロローグって感じだし。


実在の俳優や有名人を彷彿させる登場人物が出てくるのも、本書の面白いところ。これは寺島しのぶじゃない?と思った女優と、どう見ても野田秀樹だろうって感じの演出家がいた。響子はピンと来る人がいないけど(設定的には松たか子が当てはまりそうだけど、ちょっと違う気もする)、飛鳥は何故か宮崎あおいが頭にチラついて離れず。『ダ・ヴィンチ』のインタビューで、恩田さんが登場人物のモデルにした人を挙げてたらしいけど、誰だったんだろう。あと、「中谷劇場」って本多劇場のことかな〜。


特に『ガラス〜』好きなら絶対に面白いと感じるはずなので、あんまり本を読まない方にも強力におすすめしたい一冊。