小町文雄『ロシアおいしい味めぐり』

ロシアおいしい味めぐり
書店の料理本・食文化本コーナーはよくチェックしてるけど、ロシア料理の本ってほとんど見かけたことがなかった(本書にも登場する『亡命ロシア料理』という本くらいか)。おお珍しい、と即ゲット。
ロシア料理は本来多彩なものだったそうで、帝政時代に書かれたチェーホフらの小説の一部を引用して、いかにロシアの食生活が魅力的だったかが示される。その後、社会主義時代には息の根を止められる寸前になり、その時代に数年間、かの地で生活した著者は外食する度に辟易していたという。ソ連崩壊後の10年余りで、ようやくロシア料理は本来の姿を取り戻しつつあるそうだ。
食いしん坊の著者が「ロシア料理にはこういうものがありますよ! ほら!」と繰り出してくる料理の数々がすごくおいしそう〜。鳥ガラと小魚でだしを取った澄んだスープ「ウハー」、チョウザメの冷・温燻製や牛スープの煮こごり、イクラなど山海の珍味からなる前菜「ザクースカ」、かぶりつくと熱いバターが飛び出すキエフ風カツレツ(肉は鶏ささみ)、などなど。ボルシチピロシキキャビア、ウォトカ(=ウォッカ)、ビーフストロガノフといった有名どころは、勿論きっちりと解説してある。さらに、主だった料理のレシピが載っていて、材料・手順ともに家庭で再現しやすそうな感じ。暇なときに作ってみたくなる。
チョウザメは一度美味しいやつを食べてみたいなぁ。酢漬けのきのこ、ロシアのサラミも日本では食べられなさそうだ。あと、一生に一度くらいは、清水の舞台から飛び降りる気持ちでキャビアを買って味わってみたい、と思った。とりあえず年明けに、「ロゴスキー」か「ろしあ亭」か中村屋にロシア料理を食べに行こう。