星組東京公演『ベルサイユのばら フェルゼンとマリー・アントワネット編』

スーツもの・現代もののお芝居が好きな私は、その対極にあるような『ベルばら』は、あんまり好きじゃなかったりする(漫画は好き)。
でも平成ベルばら*1以降、東京公演は全組観てきてるので、やっぱり気になる……。初演以降、あっちを削ったりこっちを継ぎ足したりと、まるで改築を繰り返していびつになった家みたいなことになっていたとしても。
星組観劇は、『1914/愛』以来1年9ヵ月ぶり。

1770年。オーストリア皇女で14歳のマリー・アントワネット(成花まりん)は、フランス王太子ルイ16世のもとに輿入れすることになる。母のマリア・テレジア(邦なつき)は、まだ若い末娘の身を案じ、後見人としてメルシー伯爵(未沙のえる)を同行させる。


成長し、フランス王妃となったアントワネット(白羽ゆり)は、スウェーデンからの留学生ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン伯爵(湖月わたる)との恋を心の支えにしていた。そんな折、宮廷の浪費による重税に耐えかねた民衆が、フランス各地で暴動を起こしているとの情報が入る。フランス革命の始まりであった。女性でありながら、幼少時から男性として育てられてきた近衛隊の隊長オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ(安蘭けい)は、2人の恋が王妃の立場をますます危うくするとフェルゼンを諌めるが、フェルゼンは聞き入れようとしなかった。
ある夜、メルシー伯爵はフェルゼンのもとを訪ね、アントワネットを本当に愛しているのなら、彼女がフランス王妃としての立場をまっとうできるよう身を引いて欲しいと懇願する。苦悩の末、アントワネットに別れを告げるフェルゼン。その勇気を称えるオスカルの態度を見たフェルゼンは、オスカルが自分に想いを寄せていたことを悟るのだった。
正義感の強いオスカルは、貴族の生まれでありながら、平民を見下し安穏としている貴族たちに疑問を抱いていた。平民に銃を向けろと命令するブイエ将軍(汝鳥伶)と対立したオスカルは、近衛少佐ジェローデル(涼紫央)らの反対を押し切って、衛兵隊への転属を申し出る。オスカルを愛する幼ななじみのアンドレ(立樹遥)は、彼女を守り抜こうと誓いを新たにする。
ベルサイユ宮殿の舞踏会に現れたフェルゼンは、ルイ16世英真なおき)に帰国の挨拶をする。ルイ16世は「王妃のために残って欲しい」と告げ、王の弟プロバンス伯爵(紫蘭ますみ)は、アントワネットとの恋を露骨にあてこする。だがフェルゼンは、フランスで知ったさまざまな愛を胸に生きていくと決然と告げ、去っていくのだった。



スウェーデンに帰国し、抜け殻のような日々を送っていたフェルゼンのもとを、ジェローデルが突然訪ねてくる。……アンドレの愛に気づいたオスカルは彼と結ばれるが、翌日のバスティーユの戦いで、民衆の味方となって戦死していた。そして国王一家は、パリのチュイルリー宮殿に幽閉されていた。これらの事実を聞かされて愕然としたフェルゼンは、姉シモーヌ万里柚美)が止めるのもきかず、国王一家を救うためにフランスへと向かうのだが……。

(※ストーリー紹介長ー……。時間がある時に短く書き直そう)


  • 一番改良されたな〜と思った部分。それは、アントワネットとの恋を貫くべきか、王妃の立場を考えて別れるべきかと苦悩するフェルゼンの姿がクローズアップされていること。
    • 01年宙組フェルゼンとマリー・アントワネット編がどうだったかは覚えてないんだけど(汗)、90年花組フェルゼン編のフェルゼンは、王妃と別れろと説得するオスカルに「君は愛する人がいないからそんなことを言えるんだ」と無神経なことを言い、懇願しに来たメルシー伯爵にも「あなたは身勝手な人だ」と逆ギレするわで、「ひでー男だな」と思ってたので。
    • 今回のフェルゼンは、メルシー伯爵の懇願を受けた後逆ギレはするもののw「♪アン・ドゥ・トロワ」という曲を歌って悩み苦しむ場面あり。これまでのバージョンみたいに恋に狂って周りが見えず、しぶしぶ帰国した感じのフェルゼンじゃなくて、ちゃんと「愛する人のために身を引くのが男としての責任ではないか?」と考えようとするフェルゼンになってる辺りが、説得力があってよかった。
    • で、1幕ラストの舞踏会で、ルイ16世の前で愛について大演説。この演説の最中、ねちっこく絡むプロバンス伯爵の台詞(←セクハラもの)はしつこい気もしたけれど、フェルゼンの漢度を引き立たせる効果もあったかも。
    • さらに、「私を一途に慕ってくれた人がいる」というような台詞があり、オスカルへの気遣いも見せてる。フェルゼンの好感度が少しアップしたw
    • ここで初めてフェルゼンが「愛の面影」*2を歌う。90年花組・01年宙組ではお芝居の最初の方でまず一歌いしてたので、母が「まさかここで歌うとは思わなかったわ〜」と驚いていた。
  • 一番改悪されたな〜と思った部分。それは奥様&令嬢が、オスカルとフェルゼンに対して悶絶だとか失神だとか大騒ぎする場面が長すぎること!
    • もともと過去作でも最強に嫌いな場面だったのに*3、今回は「♪ざーますざーます」とかいう新曲まで加わって、さらに時間延長!! もーカンベンしてくれ。こんなの入れるくらいなら、アンドレが目をやられたりとか、毒入りワインとか、若手美男を取り揃えた近衛兵たちとか、もっと必要な場面があるだろうに。
    • おまけに、奥様&令嬢の演技がさらにオーバーになり、耳をつんざくような声を発していてウザい。花組のビデオをちょこっとだけ見返したけど、あそこまでキャーキャーわめいてなかったぞ。結構笑ってる人いたけど、面白いんだろうか……。私には理解できん。
    • でも、モンゼット夫人=たきちゃん(出雲綾)の「ぅえーい!へーい! キエー!!(卒倒しかける)」には思わず笑ってしまった。今日は宝塚友の会優先公演だったからか、たきちゃんが「私たちはオスカル友の会ですから〜」とアドリブを入れていた。
  • 一番びっくりさせられた部分。それは、バスティーユの戦いの場面がないまま始まった2幕のアタマ、フェルゼンの実家場面で、ジェローデルが「オスカルは……死にました」と言ったこと。
    • え! バスティーユの戦いはカット!? オスカルの戦死を口で説明するだけかよ!!と憤りかけた*4
    • その後、回想という形で「今宵一夜」→バスティーユの戦いの場面が始まったので一安心。でも、回想にする必要ってあったんだろうか。ジェローデルは今宵一夜(=オスカルとアンドレのラブシーン)のことまで知ってるんか?wって感じだし、回想の前と後とでフェルゼンが「オスカル……可哀想に」と重複した台詞を言ってるし。主役はフェルゼンとはいえ、2幕アタマは今宵一夜の場面からでよかったんじゃないだろうか。
  • フェルゼンがシモーヌ*5に対して「お姉さま」を連呼するのは「???」だった。「姉上」でいいのでは。
  • 「ゆけフェルゼン」のバックの映像がさらに進化してた。
  • チュイルリー宮殿に幽閉された国王一家の会話→ルイ16世が連れて行かれた後。公安委員(?)たちが王太子と王女を連れて行こうとし、アントワネットが「せめて子供たちだけは!」と悲痛に懇願する場面ができていた。「母としてのアントワネット」もクローズアップされていた感じ。でも、男性が女性を殴る場面は、観ていて気持ちのいいものではないな(最近の宝塚は時代の流れを考慮してか、殴るような演技はほとんどなくなってる)。
  • そういえば、アントワネットが大見得を切る「私はフランスの女王なのですから」がなくなってた! となみちゃん(白羽ゆり)が、この台詞をどんな風に言うのか聞いてみたかったな……。
  • アンドレの影が何だか薄くなっていた。そのせいか、今宵一夜の場面が唐突な感じがした……。どういう訳か、アンドレの目が傷つく→見えなくなる設定がなくなってたので(なんでー?)、オスカルの「見えていないのか……。何故ついてきたーーー!!!」もなし。フェルゼンとアンドレの「男の友情」的場面*6もなし。なしなしづくし。うーん。
  • アランも影が薄い。ベルナール&ロザリーなんて2幕になってからの登場だし。逆に、フェルゼンとマリー・アントワネット編にしては、ジェローデルの影が若干濃くなってるような。
  • 原作をカットしまくって舞台にのせてるから仕方ないとは思うけど、何だか説明的な台詞が多すぎでは。
  • 今回のキャストで「おお、これは!」と思ったのは、アントワネットのとなみちゃん。実はあまり好きな娘役さんではなく(ごめんなさい)、最後に観たのが『青い鳥を探して』の頭の弱い女優役だったので、「んー」って感じだったんだけど……アントワネットはハマってた! とても華やかで、いかにも王妃な雰囲気。
    • 最初の「♪青きドナウの岸辺に〜」は、私がこれまで生観劇した中では一番歌が上手くて「つかみはOK!」だった。声が綺麗。
    • 有名なアントワネットの肖像画を参考にしてか、プロローグで頭に帆船を乗っけてたのはすごいと思った。帆船にばかり目が行ってしまったけどwあっぱれだ。
    • 母の友人の中には「初風諄以来!」と大絶賛してた人もいるらしい。そう言いたくなる気持ちは判らないでもない。
  • わたるちゃん(湖月わたる)は、温かみのあるフェルゼンだと感じた。一緒に観劇した母及び母友人は「庶民的でフェルゼンって柄じゃないわ! アンドレでしょ」と騒いでたけど、私はなかなかよかったと思うんだけどなー。今回、オスカルやメルシー伯爵への逆ギレwがあまり気にならなかったのも、そのせいかも。髪型も全体的に好き。わたるちゃん、最後まで頑張れ。
  • オスカルのトウコちゃん(安蘭けい)は、思ったよりも女性っぽさが強調されてる感じで、ちょっと意外だった。
    • でも何故か、フェルゼンとの絡みや今宵一夜といった「女性オスカル」が前面に出てくる場面より、ブイエ将軍に「黙れーーー!!!」と怒鳴って剣を突きつけるところとか、「シトワイヤン、行こーーーーーーーー!!!」みたいな「オスカル隊長」な場面の方が、迫力があって颯爽としててよかった。
    • アンドレに頼ってちょっと甘えてる」感はよく出てたと思う。
  • 役替わりありのアンドレは、今日はしいちゃん(立樹遥)。包容力のあるアンドレって感じ。トウコちゃんと並ぶと、背の高さが「オスカル-アンドレ」的でちょうどいい。
  • 星組娘役では一番好きなウメちゃん(陽月華)のロザリー。見た目は可愛らしいんだけど、声が金属的でちょっと厳しかったな……。オスカルが死ぬ場面の「オスカル様ーーーーー!!!」の叫びがあんまりよく聞こえなかった。強くてずる賢くて勇ましいジャンヌ役(今回は登場しないけど)で、「♪あの女をギロチンに〜」とかやってるのを観てみたかった。スウェーデンの祭り(?)で踊ってるところは注視してしまった。
  • ブイエ将軍のなんとも憎々しいこと。さすが汝鳥さんだ。マヤさん(未沙のえる)も、いつもの演技と変わらないのに、メルシー伯爵らしい感じがするのは熟練の技。
  • バスティーユの戦いの場面、娘役たちがものすごく勇ましかった。
  • アントワネットから子供を取り上げようとする公安委員(?)の人たち、台詞回しをもっと頑張れ。
  • 「小雨降る途」のデュエットダンス、わたるちゃんの相手役には「え!」って感じだった。
  • 「ばらのタンゴ」は、男役たちが「オルァオルァーーー!!!」とか張り切って掛け声をかけてて面白かった。「トゥォウクォォーーー!!!」と叫んでる人もいたようなw
  • ボレロ」は独特の緊張感と色っぽさが大好きなんだけど、わたるちゃん&となみちゃんコンビは体操みたいなボレロだと思ったw
  • エトワールはたきちゃん。その後の階段下りは、ちえ(柚希礼音)が下りてきて階段にとどまる→とよこ(涼紫央)が下りてきて階段に(ry→しいちゃんが下りて(ry→3人共に階段を下りる→トウコちゃん→となみちゃん→わたるちゃんの順番だった。


脚本や演出に大いに不満はあるものの、やっぱり星組にベルばらって似合うなーと実感した。

*1:89年の雪組公演と星組公演、90年の花組公演、91年の月組公演のこと。大ブームとなった74年の初演(月組)、75年の花組公演と雪組公演、76年の星組公演と月組公演は「昭和ベルばら」。

*2:「♪振り向けば 心の荒野に〜」の曲。90年の花組版で初登場

*3:「風共」の「♪お聞きになった」も嫌い。なんで植田って、下品な奥様&令嬢の場面を入れたがるんだろ

*4:アントワネットが登場せず、アランの妹がヒロイン扱いのバージョンを作るくらいだし、植田ならやりかねん

*5:脚本によってフェルゼンの妹になったり姉になったりw でも原作は「妹ソフィア」だった気がする

*6:フェルゼンの帰国をアンドレが見送り、フェルゼンが「オスカルを守ってやれるのは君だけだ」とか言う。これは花組バージョンだけだったかな